単純ヘルペスウイルス感染症

疲れたときや抵抗力が落ちた時などに、唇、鼻、頬、時にお尻、陰部などに発症します。ウィルスによる感染症です。初めはかゆみや皮膚の違和感で気づき、その後数日して紅斑や水ぶくれが現れてきます。治癒により、水ぶくれは化膿したように濁り、やがてかさぶたとなって10日前後で治ります。何度も再発することが特徴で、接触により他のひとにもうつることがあります。

>日本皮膚科学会Q&Aの『ヘルペスと帯状疱疹』

病気の特徴

  • 皮膚に紅斑や水ぶくれが出る前に、ピリピリ、チクチクなどの違和感を覚えます。
  • 紅斑の上に小さな水ぶくれが集まって現れます。
  • 単純ヘルペスウィルス1型、2型が原因で、一度感染すると生涯神経節に潜伏します。

生活上の注意

  • 長時間日光を浴びたり、疲労やストレスが原因となり、免疫力が低下したときに発症しますのでできるだけ安静にしましょう。
  • 十分な睡眠と栄養をとりましょう。
  • 水疱の内容液には多数のウィルスが存在しますので、触ったらよく手洗いをしましょう。
  • 眼にうつることがあります。
  • 洗濯は家族のものと一緒に洗っても構いません。

治療方法

抗ヘルペスウイルス薬を使用します。抗ヘルペスウイルス薬には現在以下の3種類がよく使用されますがどの薬も残念ながらヘルペスウイルスの増殖を抑える薬ですので、体の中のヘルペスウイルスを全て無くすことはできません。

アメナリーフとは

アメナリーフはヘルペスウイルスの増殖を初期段階で阻害します。これは既存の抗ヘルペス薬(ファムビル、バルトレックスなど)とは異なる新規作用機序です。そして、腎機能に関係なくお使いいただけるのもこのお薬の特徴です。アメナリーフは腎臓で代謝されず便に排泄されるため、ご高齢の方や腎機能障害のある患者さんなど腎機能が低下した患者さんにも安心してお使いいただけます。また、1日1回投与で飲み忘れが少ないのも特徴です。そして、これまでアメナリーフの適応症は「帯状疱疹」のみでしたが、2023年2月より「再発性の単純疱疹」が追加承認されPIT処方が可能になりました。

アメナリーフ PITの服用方法
初期症状(患部の違和感・灼熱感・そう痒感)が出現後6時間以内にアメナリーフ錠200mgを6錠1回服用。

ファムビルとは
単純ヘルペスや帯状疱疹の原因であるヘルペスウイルスを標的とした抗ウイルス薬です。ファムビルは、単純ヘルペスの治療だけでなく予防することもできます。また、お薬の吸収率が高いので効果が長持ちします。そして、薬価が安いことや錠剤の大きさが小さいので飲みやすいのもこのお薬の特徴です。また、ファムビルもPIT療法が可能です。

ファムビル PITの服用方法
初期症状(患部の違和感・灼熱感・そう痒感)が出現後速やかにファムビル錠250mgを4錠服用。1回目の服用から12時間後にファムビル錠250mgを4錠服用。

バルトレックスとは
単純ヘルペス、帯状疱疹、水痘、性器ヘルペスの再発抑制と幅広く対応できる薬です。お薬の吸収が良いので単純ヘルペスに対しては1日2回の服用となります。また、年に6回以上の性器ヘルペスが繰り返し再発する方に限り再発抑制療法が保険適用となります。

再発抑制療法
半年から1年間バルトレックス錠を1日1回服用します。バルトレックスを服用している間はヘルペスウイルスは増殖することができません。長期間ヘルペスの再発を少なくし、その間に免疫力を回復させます。ヘルペスを長期間再発させないようにすると、ヘルペスはからだの免疫に増殖を抑制され、簡単に再発しないようになります。

再発抑制療法
性器に水ぶくれを発症する「性器ヘルペス」は特に再発頻度が高いといわれています。そのため性器ヘルペスを年に6回以上再発する人にはヘルペスウイルスによる症状が出ていない日も、毎日通常量の半分の抗ヘルペスウイルス薬を定期的に服用して再発を予防する治療法です。

PIT(Patient Initiated therapy)
抗ヘルペスウイルス薬はウイルスが増殖しているときに効果を発揮するので、できるだけ早く内服し始めることが重要です。しかし仕事や育児、勉強など忙しくて初期の段階で医療機関を受診できるかてゃ少ないのが現状です。そのような方は時間が取れる時にクリニックを受診してあらかじめ薬をもらっておけば、ムズムズや違和感が出てきたときにすぐ薬を飲み始めることができます。
このようにあらかじめ処方された薬を患者の判断で服用する治療のことをいいます。


ヘルペスの治療薬は、既に増えてしまったウイルスの数を減らすのではなく、ウイルスが増えるのを抑える働きをするため、ウイルスが増えている時に効果を発揮します。チクチク・ピリピリという違和感が出てきた段階で、ウイルスは増え始めています。できるだけはやく薬を使い始めて、ウイルスを増やさないようにすることで治るまでの期間を短くすることができます。しかし仕事や休診日などでタイミングよく受診できない方もいるかと思います。そのような方は症状がなくても時間があるときに受診してお薬を事前に備えておくPIT(Patient Initiated Therapy)がおすすめです。遠慮なくご相談ください。