尋常性疣贅とは (Verruca vulgaris)
ヒトパピローマウイルスが皮膚の小さな傷から侵入し、3~6カ月潜伏した後に小丘疹として発症するいぼのことです。手足や指に好発し、表面がザラザラした数mm~数cmの大きさになります。単発または多発して、集まって塊となり面を形成することもあります。通常、痛み、かゆみはありませんが、足底にできたミルメシアというタイプは、噴火口状の外観となり、歩行時に強い痛みがでることがあります。自分自身の免疫機能により自然に治ることもありますが、多くの場合放っておくことでうつって数が増えます。
>日本皮膚科学会Q&Aの『イボ』
病気の特徴
- 表面がザラザラした丘疹です。
- 徐々に拡がることがあります。
- できる場所によって、ミルメシアや糸状疣贅などの名前がついています。
- ミルメシアを除いて、痛み、かゆみなどの症状はみられません。
生活上の注意
- 他の人にはうつりにくいですが、皮膚が接触するプール用具(ビート板や水中メガネなど)やタオルの貸し借りなどはやめましょう。
- お風呂の足ふきマットは頻繁に洗いましょう。
- 体の一か所に尋常性疣贅があると、別の部位にも容易にうつります。とくに、足指は接触して隣にうつりやすいので指同士が接触しないように5本指の靴下をおすすめします。
- 他の皮膚にうつって拡がるので、かみそりでの深剃りは避けましょう。
尋常性疣贅の治療
- 液体窒素による凍結療法(当院にては炭酸ガスレーザーを併用して行います)
液体窒素による治療はスプレー式・綿棒式・医療用のピンセットで行う方法の3通りがありますが当院ではクライオプロを用いたスプレー式で行っており液体窒素の強さの調整も可能です。処置後に水疱ができることがありますが、痛みが持続し心配な場合は一度受診してください。痛みが少ない場合、かさぶたが付いている間は処置ができませんので取れてから受診してください。 - ヨクイニンの内服
漢方薬の教科書では効果として免疫細胞の働きが良くなり、ウイルスや細菌から守る効果がきたいされています。しかしこの効果は西洋薬のような研究や調査に裏付けられたものではなく、マイルドに体質改善をする程度の作用と考えられています。一応「尋常性疣贅診療ガイドライン」では推奨度Bランクで、「行うよう勧められる」とされていますので当院では凍結療法と併用して治療することが多いです。 - ビタミンD3誘導体外用+スピール膏の貼付
活性型ビタミンD3誘導体外用(オキサロール膏®️)
表皮角化細胞の増殖を抑制させて表皮肥厚を改善する作用があります。
サリチル酸パッチ(スピール膏®️)
特に皮膚が厚く液体窒素だけでは治療が難しい足の裏のイボでは「スピール膏」という角質をふやかせて剥がすテープを一緒に使うと効果的です。皮膚をふやかして剥がす効果と免疫を刺激してイボのウイルスを排除する効果もわかっています。当院では上記のオキサロールと併用して行っています。
- グルタルアルデヒド(自費)5ml 500円
殺菌消毒剤の一種であるグルタルアルデヒドがもっている細胞蛋白変性作用を利用してイボ取りを行う治療法です。この薬液を患部に塗布するとイボに感染した細胞が破壊され、しばらくすると塗布した患部が茶色く変色するので、その組織を剥離除去することでイボを取り除くことができます。
- 色素レーザーによる治療
さらに難治なイボにはVビームやロングパルスNd:YAGレーザーを用いて行っています。治療は4週間に1回程度で通常の凍結療法と併用して行っています。前処置として胼胝を行うことがあります。
いぼの治療は長い治療となることが多く、一般的に根気がいりますが当院では様々な治療を用意しております。従来の凍結療法だけでなく、効果を高めるために分厚い病変に対しては外用剤を併用したり、物理的に削ったり、レーザーと組み合わせてできるだけ早く終えるように工夫しております。他の病院で通院してもなかなか治らない方は一度ご相談ください。
伝染性軟属腫とは (molluscum contagiosum)
通称みずいぼと呼ばれているウィルス感染症です。表面に光沢があり、肌色やピンク色の半球状で、中央が少し凹んだ丘疹で多発することもあります。大きさは2~8mmくらいで、かゆみ、痛みはありません。潰したり、圧迫すると白いご飯粒様の内容物がでてきます。これに軟属腫ウィルスが多数詰まっていて、皮膚の小さな傷から侵入して感染し、手のひらと足の裏以外の、全身のどこにでも発生します。皮膚が乾燥していたり、アトピー性皮膚炎の乳幼児~小児に多くみられ、かきむしると多発し、炎症を起こすこともあります。その後自然に免疫ができて、治癒します。アトピー性皮膚炎の症状がコントロールできていないと、悪化して治癒が遅れることがあります。また、成人でもなんらかの理由で感染することがあります。
病気の特徴
- 2~8mm大の肌色、ピンク色の丘疹です。
- 容易に感染して多発し、他の人にもうつります。
- 潜伏期間は50日程度です。
- 痛み、かゆみなどの症状はみられません。
- 免疫機能異常、性行為、感染した子供との接触などで発症することもあります。
生活上の注意
- 他の人にもうつるため、プールで遊具やタオルの貸し借りはやめましょう。
- こすると潰れて、内容物がでて感染が拡がるため、こすらないようにしましょう。
- 皮膚が乾燥しないように保湿を心がけましょう。
伝染性軟属腫の治療
- 経過観察
治療しない場合でも半年から2年で自然に治ることもあり場合によっては経過観察をします。ただ小児の場合は大抵いじって範囲を拡大させてしまうため、数が少ない場合は摘出するのが基本です。 - 物理的に摘除
痛みを伴うため痛み止めのテープ(ペンレステープ)を使用してピンセット(トラコーマ攝子)により除去します。取りきれていなかった水いぼが出てくることがあるので2週間後を目安に再診してもらいます。
- スピール膏の貼付
小さく切ったスピール膏をテープで貼り付けます。いぼがなくなるまで2日ごとにはり替えます。
伝染性軟属腫の症例
![](https://aoi-skin-clinic.com/wp/wp-content/uploads/2023/09/伝染性軟属腫 治療前-scaled.jpg)
治療前
![](https://aoi-skin-clinic.com/wp/wp-content/uploads/2023/09/伝染性軟属腫 治療後-scaled.jpg)
治療後
処置が痛いのでかわいそうで放置して、イボがどんどん拡がって結局処置を希望される方もいらっしゃいます。少ない数なら早めに処置をした方が拡がるリスクは少ないと考えます。当院ではできるだけストレスを減らすため処置の際には麻酔テープも使用しています。イボかなと思ったらはやめに受診してご相談ください。