尋常性乾癬とは

青年期から中年に発症し、厚い銀白色のカサカサがついた紅斑がみられ、長期にわたり症状がよくなったり発症したりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。爪が変形することもあります。原因は不明ですが遺伝的素因に生活要因およびほかの病気がきっかけとなって発症したり、悪化したりします。珍しい病気ではなく日本に約55万人の患者様がいます。

>日本皮膚科学会Q&Aの『乾癬』

病気の特徴

  • 全身の皮膚のどこにでも症状はでるが、刺激を受けやすい頭、肘、膝、お尻が好発部位。
  • 直径1㎝~数㎝の紅斑がみられる。
  • かゆみがあることも、ないこともある。
  • 爪が変形したり、凹んだりすることがある。
  • 他の人にうつる心配はない。

生活上の注意

  • 的確な治療と規則正しい生活により、通常の生活が送れること目標としましょう。
  • 肥満は悪化因子の一つですので、改善しましょう。

尋常性乾癬の治療

乾癬にはさまざまな治療があります。

外用療法

乾癬の外用薬は副腎皮質ステロイドと活性型ビタミンD3の2種類が使用されています。ステロイドは皮膚の炎症を鎮める働きがあります。活性型ビタミンD3は、皮膚の過剰な角化を正常に戻し元の状態に戻す働きをします。この2つの成分があらかじめ配合された外用薬もあります。

内服療法

外用治療でコントロール出来ないときに、外用治療と併用します。

レチノイド(チガソン®)
皮膚のターンオーバーを抑えることにより、皮膚炎を改善させます。副作用として口唇炎が多く、手足のめくれや脱毛を生じることがあります。また肝機能障害などをきたすことがあるため、定期的な血液検査が必要です。妊娠すると奇形を生じることがあるため、服用中の避妊が必要です。内服中止後にも、女性で2年間、男性で半年間の避妊が必要なため将来出産予定のある女性には不向きです。

シクロスポリン(ネオーラル®)
皮膚科領域では、乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚炎疾患の治療に広く使用されています。治療効果は高いですが、腎機能障害を起こすことがあるため定期的な血液検査が必要です。また、高血圧になることがあるため、血圧測定も必要です。

アプレミラスト(オテズラ®)
PDE4を阻害することで抗炎症効果があり、皮膚炎を改善させます。内服開始した時には、悪心・下痢・吐き気を生じることがあります。そのため徐々に容量を増やしていきます。シクロスポリンよりも副作用は少ないですが治療効果はゆっくりでてくることが多く継続が必要です。

光線療法

外用治療でコントロール出来ないときに、外用治療と併用します。
肝障害や腎障害のため内服治療が出来ないときなどでも使用できる安全性の高い治療です。

ナローバンドUVB(TARNAB)
基本的にはエキシマライトにて治療をするため使用頻度は少ないですが、難治の場合エキシマライトと併用することもあります。

エキシマライト
小範囲に強い308nmを照射する最新の光線治療です。これまでの治療より効果が強く、従来の紫外線治療で無効だった場合でも効果が出ることがあります。難治病変には上記のナローバンドUVBと併用することもあります。病変部位のみに照射が出来るため、安全性にも優れています。

抗体療法(生物学的製剤)

重症の尋常性乾癬に対しては、生物学的製剤を使用することを検討します。生物学的製剤の治療効果はとても高く、ほとんどの患者において効果を期待することができるといわれています。2010年から認可された抗TNFα製剤からはじまり、3か月毎投与で効果を維持する抗IL-12/23p40抗体、さらにはIL-17関連抗体や抗IL23p19抗体などが続々と登場して皮疹が完全になくなる患者さんも少なくありません。上記治療でコントロール出来ないときに提案し、基幹病院にご紹介いたします。

乾癬かどうかを自分で判断することは難しいかと思いますが、初診では患者さんからは皮疹のほかに「フケがたくさん落ちて困る」「爪が変形して見た目が悪くなっている」といった悩みをよく聞きます。こうした皮膚症状で困っていたら、まずは受診してください。また乾癬の患者さんには肥満の方も多くみられます。その際には心筋梗塞などの命に関わる危険な病気の原因となる高血圧、高脂血症、糖尿病といった合併症のある方が多くいらっしゃいます。そのため、治療を始める前に検査を行い、全身の状態を把握することも重要です。また治療においては近年進歩がめざましくこれまでの塗り薬や飲み薬だけではなく、生物学的製剤により治療の選択肢が増え、患者さんによっては症状のない状態まで回復が期待できるようになってきました。生物学的製剤は近隣の導入可能な施設での開始になりますが、導入後は当院にても対応可能です。遠慮なく一度ご相談ください。