多汗症とは(HYPERHIDROSIS)
運動の後や気温の変化などの外的要因がないのに、多量の汗をかくようになる症状です。そのため日常生活に支障をきたしたり、精神的な不安を感じることも少なくありません。多汗症には局所的多汗症と全身性多汗症に分類されます。
病気の特徴
局所性多汗症
主に手のひら、足の裏、わきの下、顔などの体の特定の部位から多量の汗が出ます。精神的緊張により、症状が現れやすくなります。
全身性多汗症
全身に多量の汗をかく症状です。原因としては、高温環境、重労働、肥満、妊娠、閉経などがありますが。甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、感染症、薬剤性などの病気によることもあります。
生活上の注意
交感神経の働きが活発になると汗をかきやすくなるため、交感神経の働きを抑えるよう、次の点に気を付けましょう。
- 辛い物や酸味の強いものは避けましょう。
- カフェインは交感神経を優位にするので、カフェインを多く含むコーヒーや紅茶などはできるだけ控えるようにしましょう。
- 規則的な生活習慣を心がけましょう。
- リラックスして緊張状態をやわらげ、ストレスを減らしましょう。
多汗症の治療
多汗症は、汗をかく部位や年齢によって治療に使用する薬剤を選択します。
ワキ汗の場合
保険適応のエクロックゲルやラピフォートワイプの使用をお勧めします。
効果不十分の場合、パースピレックス(塩化アルミニウムローション)の併用やボツリヌストキシン注射(保険適応外)を行うことができます。
手汗の場合
保険適応のアポハイドローションの使用をお勧めします。
効果不十分の場合、パースピレックス(塩化アルミニウムローション)の併用をおすすめしております。
顔面・頭部の汗の場合
パースピレックス(塩化アルミニウムローション)を使用することもありますが、顔のかゆみや被髪部の塗りにくさもありなかなか継続が難しいことが多く、その際には希望があればプロバンサインという内服薬を使用することがあります。ただし、閉塞隅角緑内障や前立腺肥大の方は使用できません。
全身の汗の場合
プロバンサインという内服薬が保険適応となっております。ただし、閉塞隅角緑内障や前立腺肥大の方は使用できません。
エクロックゲル
日本で初めて健康保険の適用が認められた、原発性腋窩多汗症の塗り薬です。交感神経から伝えられる汗を出す指令を受け取れないようにブロックすることにより、発汗を抑えることが期待出来ます。
使用方法
- 通常1日1回適量をワキの下に塗布します。
- 必ず指示された使用方法に従ってください。
- 医師の指示なしに自分の判断で使うのをやめないでください。
ラピフォートワイプ
ラピフォートワイプの有効成分は汗腺のムスカリンM3受容体へのアセチルコリンの結合を阻害することで発汗を抑制します。
使用方法
- 1日1回一包に封入されている不織布1枚を用いて薬液を左右の両ワキに1回ずつ塗布します。
- 1回使い捨てのワイプ製剤ですので簡便かつ衛生的に使用することができます。
アポハイドローション
日本初の保険適用の原発性手掌多汗症治療薬です。手のひらの皮膚から吸収されて、皮膚の下の交感神経から出される発汗を促す成分(アセチルコリン)をブロックすることで過剰な発汗を抑えます。
対象年齢: 12歳以上
使用方法
- 1日1回就寝前に手のひらに塗ってください。
- お薬を塗った後は起床時まで手を洗わないでください。
- 塗り忘れた場合は次の就寝前のタイミングで塗布するようにしてください。
- 万が一、目に入った場合はすぐに洗い流してください。
パースピレックス (塩化アルミニウムローション) 保険適応外
パースピレックスは塗るタイプの制汗剤(医薬品)です。汗を抑制したい部位(ワキ・手・足)に塗布すると、主成分の塩化アルミニウムが汗腺深部に角栓を形成。汗腺にフタをして汗の分泌を物理的に抑制するものです。1回の使用で2~5日間発汗抑制効果を持続できるため、何度も塗りなおす手間がなく続けやすいのも特徴です。
対象年齢:12歳以上
使用方法
- 就寝前に汗を抑えたい部位に適量を塗布します。
- 衣類が色移り•色落ちしてしまう可能性があるため乾いてから着衣してください。また宝飾品や貴金属への接続を避けてください。
- 剃毛、脱毛後は48時間は使用しないでください。
- 翌朝、塗布部位を濡れたタオルなどで拭いてください。塗りなおしの必要はありません。
- 効果がでるまで1週間程度は毎晩塗布してください。効果が出始めたら週2~3回の塗布でOKです。
- まれに炎症やアレルギー症状を呈する事があります。その場合は使用を止めてください。
合併症・副作用
- 肌質や肌の状態によって、塗布後に発赤、かゆみを生じる事があります。
注意事項・禁忌
- 剃毛、脱毛後48時間は使用しないでください。
- 目に入れたり、粘膜に触れさせたりしないでください。
- 塗布後直後に着用する衣類が色移り・色落ちしてしまう可能性があります。また、宝飾品や貴金属への接触を避けて下さい。
- まれに、炎症やアレルギー症状を呈する事があります。その場合は使用を止めてください。
料金(消費税込)
パースピレックス(ロール)脇用 | 4,950円 |
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パースピレックス(ローション)手、足用 | 5,500円 |
この治療で使用される薬品は国内では医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認薬です。
入手経路等
RIEM ANN & CO. A/S(デンマーク)より製造されたものを当院で個人輸入しております。
個人輸入された医薬品等の使用リスクに関する情報は下記URLをご確認ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/
国内の承認医薬品の有無
国内にて承認されている同効の薬はありません。
諸外国における安全性などに関する情報
多汗症はさまざまな保険治療の選択肢が増えてきています。ただしその適応はエクロックゲルが12歳以上、ラピフォートワイプが9歳以上、アポハイドローションが6歳以上とそれぞれ異なっており年齢制限があります。
多汗症は完治させるのは難しいですが、コントロールすることは可能です。多汗症にお悩みの方は一度ご相談ください。
ワキガ
ワキガ(腋臭症)とは (osmidrosis)
わきの下のにおいが強い状態です。腋窩や外陰部にあるアポクリン腺から分泌されるアポクリン汗自体は無臭ですが、その汗の中の脂肪酸が皮膚の細菌により分解されて低級脂肪酸となり、この脂肪酸がにおいの原因となります。思春期よりアポクリン腺は発達します。精神的興奮や運動により発汗が増加すると、においも強くなります。優性遺伝となりますので、耳垢の軟らかい人に多い傾向があります。
病気の特徴
- 家族に同じ人がいるかどうかを確認します。
- 耳垢が湿っているかどうかを確認します。
- ガーゼ法:制汗剤を使用していないことを確認したうえで、左右別々にガーゼで腋をこすってもらい、そのガーゼのにおいを嗅いで確認します。
- 皮膚に炎症の所見はみられません。
- わきから匂いがすると思い込んでいる、神経症的要素のこともあります。
生活上の注意
- 毎日入浴して清潔を保ちましょう。
- 銀イオン入りの制汗剤などを使用しましょう。
- アポクリン腺からでる汗や細菌の付着を防ぐ目的で毛の処理も有効です。
ワキガの治療
- 保存的治療
・制汗剤で汗のコントロールをします。
・ボツリヌス毒素の局所注射による汗のコントロールも有効です。
・細菌の影響を抑えるため抗生物質の軟膏を外用します。
・レーザー脱毛をして清潔にすることで汗や細菌の付着を防ぎます。 - 根治療法
手術
わきの下の皮膚切開からアポクリン腺の分布している層を剪刀(外科手術用はさみ)で皮膚の裏側から切除する方法が最もよく行われています。最近は剪刀の代わりに切除用の特殊な器械(クアドラカット剪除吸引器、超音波メス、脂肪吸引器など)を用いる方法もあります。(当院にてはおこなっておりません)
ミラドライ
マイクロ波を利用してアポクリン腺を破壊する治療機器の有効性が報告されています。(当院にてはおこなっておりません)
軽症の方ならまずは制汗剤やボトックスによる汗のコントロールと抗生物質の軟膏の外用やレーザー脱毛治療で十分対応可能かと思います。ただし重症の方は根治療法をおすすめしています。
まずは客観的な評価が重要です。一人で悩まずにご相談ください。