母斑(アザ)とは

アザは先天性の異常であり、血管系の赤アザ、メラニン系の青アザ、茶アザ、黒アザ、その他イボ状のアザなどがあり、その病気ごとに治療方針を決めていきます。

>日本皮膚科学会Q&Aの『アザ』『ホクロ』

青アザ

蒙古斑・異所性蒙古斑

臀部に存在するものを蒙古斑、その他の部位に存在するものは異所性蒙古斑と呼ばれています。蒙古斑は黄色人種に多く、生まれたらすぐにほぼ100%存在しています。しかし多くが通常5,6歳くらいまでに自然に消退します。ただ10歳以降に存在するものは成人になっても残るものが多いと考えられています。一般的に濃く、円形、辺縁がはっきりしているものは残ることが多いといわれています。

病気の特徴

  • 臀部に存在するものを蒙古斑、その他の部位に存在するものを異所性蒙古斑といいます。
  • 蒙古斑の多くは5,6歳くらいまでに自然消退しますが成人になっても残ることもあります。
  • 一般的に濃く、円形、辺縁がはっきりしているものは残ることが多いといわれています。

生活上の注意

  • 早めの治療が重要です。
  • 1回の治療では消えません。治療回数には個人差があります。
  • 日焼けをしないようにしてください。

治療方法

  • Qスイッチレーザーによって治療を行います。 1回のレーザー治療では完治は難しく、レーザー治療の間隔を3〜6か月ほど空けながら、5回程度のレーザー治療を行います
    ※お子様の安全のために動かないように固定してレーザー治療を行います。
  • 当院使用レーザーQスイッチアレキサンドライトレーザーALEX2®
             シネロンキャンデラ社製(健康保険適応あり)
  • 治療間隔:3〜6カ月に1度
    ※広範囲なアザは3カ月おきではなく短期間で分割してレーザーをしていきます。
  • 治療回数:1〜5回(濃さ、範囲による)
  • 治療効果:適切なレーザー治療により消失します。

レーザーの副作用

  • 色素沈着 :照射後は遮光が必要です。
  • 一過性色素脱失 :ほとんどが成長と共にもどるので心配はいりません。

青アザ 異所性蒙古斑 症例写真

症例1 1歳男児

異所性蒙古斑(治療前)
異所性蒙古斑(3年8ヶ月後)

Qスイッチレーザー7回照射

症例2 1歳女児

異所性蒙古斑(治療前)
異所性蒙古斑(9ヶ月後)

Qスイッチレーザー3回照射

症例3 30代女性

Qスイッチレーザー6回照射

この治療はメラニンに反応するレーザーを使用するため日焼けしていない肌へのレーザー照射が一番安全に治療可能です。そのため治療開始はできるだけ早期に行う必要があり、日焼けをしていない乳児期がベストです。ただし1回では消えないため個人差はありますが年単位の治療になります。

太田母斑

目の周りや頬を中心とした顔面の片方(三叉神経第1、第2領域)にできる青アザで、自然に消えることはなく思春期以降を境に悪化することが多いと考えられています。経過をみても消失せず、加齢とともに濃くなり広がっていきます。また、肩の周りにできる同じようなアザは伊藤母斑と呼ばれます。

病気の特徴

  • 目の周りや頬を中心とした顔面の片方にできる。
  • 一般に自然消退はなく、思春期以降に悪化することが多いといわれています。
  • 肩の周りにできる同じようなアザは伊藤母斑と呼ばれます。

生活上の注意

  • 1回では消えません。治療回数にも個人差があります。
  • 治療の間は日焼けの予防も大切です。
  • 球結膜のメラノーシス(白目の青アザ)は緑内障を合併することがありますので、就学前に眼圧の検査をお勧めしています。
  • 治療を行っても再発することがありますが再治療により改善します。

治療方法

  • 全例適応でQスイッチレーザーによって治療を行います。1回のレーザー治療では完治は難しく、レーザー治療の間隔を3〜6か月ほど空けながら、5回程度のレーザー治療を行います。
    ※お子様の安全のために動かないように固定してレーザー治療を行います。
  • 当院使用レーザーQスイッチアレキサンドライトレーザー ALEX2®
             シネロンキャンデラ社製(健康保険適応あり)
  • 治療間隔:3~6カ月に1度
    ※広範囲なアザは3カ月おきではなく短期間で分割してレーザーをしていきます。
  • 治療回数:1~5回(濃さ、範囲による)
  • 治療効果:適切なレーザー治療により消失します。

レーザーの副作用

  • 色素沈着 :照射後は遮光が必要です。
  • 一過性色素脱失 :ほとんどが成長と共にもどるので心配はいりません。

青アザ 太田母斑 症例写真

症例1 20代女性

Qスイッチレーザー 7回

症例2 30代男性

太田母斑(治療前)
太田母斑(2年半後)

Qスイッチレーザー 6回

症例3 40代女性

Qスイッチレーザー 6回

症例4 40代女性

Qスイッチレーザー 25回

Qスイッチレーザーの料金表(保険適応)

4㎠未満6,000円
4㎠以上~16㎠未満7,110円
16㎠以上~64㎠未満8,700円
64㎠以上11,850円
お子様は自治体によってご負担はありません。

1回では消えませんが3年かけて治療を行えばかなりきれいになります。ただし合併症の予防や治療期間の短縮のためには徹底した遮光が重要です。白目が青い(球結膜メラノーシス)の治療方法はいまのところありません。

赤アザ

いちご状血管腫(乳児血管腫)

いちごに似ているので、いちご状血管腫とよばれていましたが、最近では乳児血管腫と呼ばれるようになってきています。未熟な毛細血管(血管内内皮細胞)の増殖で、生後1~2週頃に目に見えるようになり、多くは6カ月まで大きくなり1歳以降より徐々に小さくなっていきます。臨床所見で局面型、皮下型、混合型(腫瘤型)の3タイプに分類されます。

病気の特徴

  • 未熟な毛細血管の増殖です。
  • 多くは生後1~2週間で気づき、6カ月まで大きくなり、1歳以降より徐々に小さくなっていきます。
  • 局面型、皮下型、混合型(腫瘤型)の3タイプに分類されます。
  • 従来は自然消退する可能性があるため放置されることが多くみられましたが、近年のレーザーの進歩により治療の適応が広がりました。

生活上の注意

  • 臨床像はさまざまであり、通常は生後1~2週間頃に気付き、6カ月頃まで増大し、1歳過ぎより縮小化が始まります。
  • 未治療の場合、増大期以降も赤み、膨隆が残存し、皮膚表面がしわしわになり残存することがあります。
  • レーザー治療、内服治療もあり、これらのコンビネーション治療を要することもあります。
  • レーザー治療の回数には個人差があります。
  • 残存した場合は手術が必要なこともあります。

治療方法

  • 基本的には経過観察のみでよくなるとされますが、最近では早期からプロプラノロールの内服治療や色素レーザー治療を行うことがあります。こうした治療を行うことによって、より早期に赤みが消えることが期待されます。
    ※お子様の安全のために動かないように固定してレーザー治療を行います。
  • 当院使用レーザー:色素レーザー VbeamⅡ® シネロンキャンデラ製(保険適応あり)
  • 治療間隔:1~3カ月に1度
    ※広範囲なアザは3カ月おきではなく短期間で分割してレーザーをしていきます。
  • 治療回数:2~10回
  • 治療効果:適切なレーザー治療により血管腫は消退します。

レーザーの副作用

  • 紫斑が起こるが消退します。
  • 炎症後色素沈着をおこすことがあります。
  • 潰瘍形成(ただしレーザーと関係なく潰瘍形成を生じることもあります)。

内服治療の適応

 以下のものはレーザー治療と内服治療との併用が必要です。

  • 生命や機能を脅かす合併症をともなうもの
  • 顔面の広範囲で急速に増大するもの
  • 潰瘍を形成し、出血傾向のあるもの
  • レーザー治療により増殖が制御できないもの
    使用薬剤:プロプラノロール
    薬剤導入:必要と判断した際は適切な施設に紹介します。

赤アザ いちご状血管腫 症例写真

症例1

いちご状血管腫(治療前)
いちご状血管種(10ヶ月後)

Vビーム 3回

症例2

Vビーム 8回

症例3

Vビーム 10回

症例4

Vビーム 15回

乳児血管腫の臨床像はさまざまであり、通常は生後1~2週頃にはっきりしてきて、6カ月頃までは増大し、1歳過ぎより縮小化していきます。ほとんどがレーザー治療単独で退縮しますが、経過によっては内服治療の併用が必要なこともあります。その際は適切な施設への紹介となります。またレーザー治療の回数は個人差があります。残存した場合には切除が必要なこともあります。

単純性血管腫(毛細血管奇形)

赤い平坦な「あざ」です。生まれつきの毛細血管の異常なので、厳密には血管腫ではなく、奇形に分類されます。毛細血管が異常に増えて集まった状態です。自然に消えることはなく、ゆっくり色が濃くなったり大きくなったりすることかあります。大人になると盛り上がることがあります。顔面に存在する場合には、整容上大きな問題となります。片側顔面の三叉神経1~2領域に存在する場合Sturge-Weber症候群、四肢片側にある場合には、Klippel-Trenaunay-Weber症候群を疑う必要があります。

病気の特徴

  • 生まれつきの毛細血管の異常です。
  • 境界のはっきりした赤みわ呈しています。
  • 生下時からみられ、成長と共にあざが厚くなることがあります。
  • ゆっくり大きくなり、消退することはありません。
  • 片側顔面の三叉神経1〜2領域に存在する場合Sturge-Weber症候群、四肢片側にある場合には、Klippel-Trenaunay-Weber症候群を疑う必要があります。

生活上の注意

  • 可能な限り超早期のレーザー治療が有効です。
  • レーザー治療を行っても手足の末端や顔面の中心部などの露出部は有効性が低いと考えられています。また5%に治療抵抗性のものもあります。放置した場合には分厚くなり、しこりができる可能性があります。
  • Sturge-Weber症候群は知能障害やけいれん発作、先天性緑内障を起こすことがあり他科との連携も要します。
  • Klippel-Trenaunay-Weber症候群は成長と共に患肢の軟部組織および骨の肥大と延長がおこり、さらに静脈瘤を合併します。脚長差は靴の調整をしたり、太さに対しては弾性ストッキングの使用で予防を行います。また他科との連携も必要です。

治療方法

  • 使用レーザー:色素レーザー VbeamⅡ®  シネロンキャンデラ製(保険適応あり)※お子様の安全のために動かないように固定してレーザー治療を行います。
  • 治療間隔:1~3カ月に1度
    ※広範囲なアザは3カ月おきではなく短期間で分割してレーザーをしていきます。
  • 治療回数:2~10回
  • 治療効果:適切なレーザー治療により血管腫は消退するが再発することも多く、長い経過観察は必要です。

レーザーの副作用

  • 紫斑が起こるが消退します。
  • 炎症後色素沈着を起こすことがあります。

単純性血管腫の症例

症例1

Vビーム26回照射

生後1か月以内でも治療可能でできるかぎる早期の治療が有効なためできるだけ早めの受診をおすすめします。

正中部母斑

毛細血管が機能的に拡張した状態で、生まれたときから存在します。顔面の中心にあるものをサーモンパッチ、うなじにあるものはウンナ母斑と呼ばれています。遺伝するのでご両親、兄弟にみられることもあります。

病気の特徴

  • 生下時に存在し毛細血管が機能的に拡張した状態です。
  • 顔面の中心にあるものをサーモンパッチ、うなじにあるものはウンナ母斑と呼んでいます。
  • 遺伝します。

生活上の注意

  • 3歳までに90%は自然消退するといわれています。
  • 成人まで残存することもあり、濃く辺縁がはっきりしたものは早期にレーザー治療を行います。

治療方法

 上まぶたや髪の毛の生えている部分以外で濃いものは治療の適応になります。
※お子様の安全のために動かないように固定してレーザー治療を行います。

  • 使用レーザー:色素レーザー VbeamⅡ® シネロンキャンデラ製(保険適応あり)
  • 治療間隔:1~3カ月に1度
  • 治療回数:1~5回
  • 治療効果:適切なレーザー治療により血管腫は消退します。

レーザーの副作用

  • 紫斑が起こるが消退します。
  • 炎症後色素沈着をおこすことがあります。 

Vビームレーザー料金表(保険適応)

~10㎠以下8,140円
11㎠以上~20㎠以下9,640円
21㎠以上~30㎠以下11,140円
31㎠以上~40㎠以下12,640円
41㎠以上~50㎠以下14,140円
51㎠以上~60㎠以下15,640円
お子様は自治体によってご負担はありません。

3歳までには90%は自然消退するといわれていますが、濃いものに関してはなるべく早くの治療がおすすめです。ただし上眼瞼や有毛部は消失しやすいため治療の必要はありません。

 

茶アザ

茶あざは表皮に存在するメラニン色素が多いために、周りの皮膚より茶色く見えるあざです。カフェオレ斑、扁平母斑、ベッカー母斑があります。

カフェオレ斑

生まれた時に存在しますが、生後まもなく生ずることもあります。境界が明瞭なコーヒー牛乳色の色素斑で、大きさは直径0.2~20cmと様々です。10~20%の人にみられるありふれたあざですが、径1.5cm以上の色素斑が6個以上あればレックリングハウゼン病(神経線維腫症1)という遺伝疾患の可能性があります。

扁平母斑

カフェオレ斑と見た目では全く区別できない色素斑でレックリングハウゼン病などの病気でない人に生じた場合に扁平母斑と呼んでいます。

ベッカー母斑

遅発性扁平母斑とも呼ばれるように、思春期に生ずる大きな褐色の色素斑です。表面はややざらざらし、境界はぎざぎざしていることが多いです。肩甲部から前胸部にかけて生ずることが多いのですが、おなかや、四肢に生ずることもあります。約半数の患者では色素斑に多毛がみられます。

茶アザはレーザーに反応の悪いものも多く、再発することも多いため基本的には積極的なレーザー治療はおすすめいたしておりません。治療の際は十分説明し理解されたうえ自費治療で行っています。

アザ・シミのレーザーは格段に進歩してきています。従来レーザー治療は保険適応がなく非常に高額な費用のかかる治療でした。現在では多くの疾患が保険適応となっています。現在赤アザ(単純性血管腫、苺状血管腫、毛細血管拡張症)、青アザ(太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着)、茶アザ(扁平母斑)に保険による治療が可能です。まずはお気軽にご相談ください。